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2017-11

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『 軍事アナリストの最新軍事情勢レポート4 』 - 2013.04.12 Fri


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軍事研究家の黒井執斗様に最新の軍事情勢レポートを御執筆いただきました。
今回のタイトルは『 空軍力の谷間と防衛産業のゆくえ、そして緊迫の朝鮮半島 』です。
併せて、作家・国際政治学者の深田 匠先生も序文を投稿して下さいました。

一人でも多くの方に読んでいただきたい内容です!ぜひ拡散にご協力下さい。


※過去の軍事情勢レポートにまだ目を通しておられない方は、ぜひ併せてご覧下さい。
『 軍事アナリストの最新軍事情勢レポート1  今、試される日本の覚悟~牙を剥く中国と暴走する北朝鮮~』
http://sensapo.blog.fc2.com/blog-entry-4.html
『 軍事アナリストの最新軍事情勢レポート2  開戦前夜は近し 』
http://sensapo.blog.fc2.com/blog-entry-7.html
『 軍事アナリストの最新軍事情勢レポート3  核の拡散と日本の決断 』
http://sensapo.blog.fc2.com/blog-entry-11.html


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『 日台漁業協定がいざなう対中包囲網構築への道 』
(作家・国際政治学者 / 深田 匠)

4月10日、日台漁業協定が調印され、国内各紙も「中台連携にくさび」と報じた。一歩前進であるが、これは非常に大きな一歩である。
長年にわたり中国の顔色を伺うだけの場当たり外交しかできなかった日本が、台湾を切り札のカードとして対中包囲を進めるという明確なる国家戦略に基づいて踏み出した一歩なのだ。官邸主導で日本の舵を正しい方向へと向けた安倍政権の素晴らしい決断を大いに評価したい。
この日台漁業協定に対して中国は「重大な懸念」を公式表明し、中国マスコミでは「台湾当局は国賊だ」「中華民族に対する最大の裏切り」などといった罵倒が飛び交っている。この日台接近によって中国の覇権拡大戦略に確実に黄色信号が灯ったからである。私見では日本はもっと大幅に台湾に譲歩してもよかったと感じているが、それでも協議開始以来17年目にしてようやく協定妥結となった意義は極めて大きい。

台湾は経済面での対中依存を深めてはいるが、安全保障面では日米同盟側に属しており、台湾人のほとんどは「現状維持」を望んでいる。多くの台湾人は「本心では独立したいが、それを実行に移すと中国が侵攻してきて戦争になる」という怖れをいだいてるからだ。それゆえに沖縄に米軍が存在しているという事実は台湾にとっても大きな意味を持つ。
従来の日本外交は中国の顔色を伺って台湾に差別的であり、また中国は台湾の外省系マスコミなどを通じて盛んに反日プロパガンダ工作につとめ日台離反を目論んできた。しかしそれにも拘わらず台湾の民心の大勢は親日的であり続けてきた。
安倍首相はその台湾の友情に応え、FACEBOOKで「台湾は日本の大切な友人」と自ら記し、東日本大震災追悼式の指名献花に台湾代表を加えた。この友情の贈り合いが漁業協定妥結となって実を結んだのだ。
この日台漁業協定妥結が意味するものは、たとえ対中融和的な国民党政権といえども、大陸とは異なる独自の道、すなわち台湾は日米側に軸足を置いて親日の道を歩むことを宣言したに等しい。日本だけではなく台湾もまた大きな決断を行ったのだ。
この一歩がさらなる日台連携深化の足がかりとなり、日台国交回復、日台安保同盟締結、ひいてはアジア版NATO構築へと進むことを切に願うものである。

安倍首相は政権発足後きわめて精力的に対中包囲網構築へと動き出している。もちろん首相の立場では「対中包囲網」などと口にすることはできないし、一般に「セキュリティーダイヤモンド構想」と呼ばれている。しかしてその実は中国覇権の拡大を抑止するための対中包囲網であり、TPP参加もその一環として捉えることができる。国家戦略不在のまま国際社会を漂流してきた日本が、いわば初めて明確に国家としてのグランドデザインを示したのだ。このまま座して中国の覇権には呑み込まれない、日本は中国との冷戦に勝ち残るという国家の強い意思を、安倍政権は力強く内外に示した。

だが、このグランドデザインの実現には多くの困難を乗り越えていかなければならない。米国にも親中・反中の2つの政治勢力が存在している。「中国を重視し米中関係の強化に取り組む」と発言するケリー国務長官と、「国連安保理で中国に拒否権を与える必要はない」と主張する共和党重鎮マケイン上院議員を比較してみれば、「2つのアメリカ」が存在していることが分かるであろう。
実はオーストラリアもまた親中・反中の2つの政治勢力が拮抗している国である。オーストラリアのカー外相が、わざわざ「オーストラリアは中国牽制に反対する。安倍首相の提唱する対中包囲4ヶ国同盟(日・米・印・豪)を我々は支持しない」などと述べたのも、同国の親中派勢力の政治的影響力の大きさを物語っている。

その困難を見越したごとく中国は1月12日付の北京日報で、安倍首相の対中包囲網について「実際に日本の呼びかけに応じるのはフィリピンとベトナムの2国だけという寂しい結果に終わるだろう」と述べている。しかし日本が台湾との関係強化へと大きく踏み出したことで、中国の足元は崩れだしたのだ。
対中包囲網の構築においては、米国をひとまず置けば、最も重要な鍵を握るのは台湾・インド・韓国の3ヶ国である。この3ヶ国はそれぞれ対日感情や歴史観に差異があるが、地政学的には必ず日本側の陣営に確保しなければならない重要国である。とりわけデリケートかつ周到な外交戦略を必要とするのは韓国であり、本当は慰安婦問題などで大いに言いたいことがある筈の安倍政権が我慢して親韓外交策を採っていることは評価できる。
そして実は韓国を日本側に大きく引き寄せる秘策ともいうべき戦略案があるのだ。朝鮮半島史を検証する中であるヒントを得て私はその戦略案をまとめることができた。ここで述べるには長くなりすぎるので、その秘策については現在執筆中の次著にて披露したいと思う。

このように外交戦略においては安倍政権は正しい方向へと舵をきっているものの、防衛面においては過去の政権のツケによって問題が山積している。今回の黒井氏のレポートで「航空自衛隊にとって、ここ数十年の間かつて無かった戦力の谷間の状況になりつつある」と指摘されているが、中国の異常極まる軍事力増強によって日本の空の護りは日増しに危うくなっているのだ。
黒井氏がこのレポートで述べておられるように、本来は現在日本を護っている筈であったステルス戦闘機F-22は、「イージス艦の機密情報がコピーされて外部へ持ち出され、中国籍の妻を持つ自衛官の自宅に持ち帰られていた事案が発覚」したことなどが原因となって、米国はF-22の日本への提供を認めなかった。スパイ防止法を制定できなかった日本自身が招いた結果だといえる。
現在、自衛隊で外国籍の配偶者を持つ隊員はおよそ800名、そのうちの約600名が中国人である。中国人妻を持っているからといってその隊員がスパイになると決め付けるつもりはないが、当の中国では軍事機密を扱う軍人は旧西側諸国の国籍者との結婚を禁じている。スパイは死刑か無期懲役と相場が決まっている中国でもこれだけ用心しているのに、スパイ防止法すらない日本がこの無防備な状態であれば米国が機密漏洩を懸念するのはやむを得ないだろう。

さらに後継であるF-35Aは計画遅延の連続でいまだ配備がかなわず、在日米軍を抜きにしての日本独自の防空能力は今や危機的状況にあるといえよう。日本の軍事力が中国に拮抗し牽制するだけの力がなければ、対中包囲網は実現しえない。軍事力のパワーバランスにおいて日本が明らかに中国よりも劣勢となれば、フィリピンやベトナムですら対中包囲網への参加を躊躇するだろう。それは日本が中国の覇権下に呑み込まれ沖縄すら奪われる悪夢の未来へとつながる。

もはや日本が妄想平和主義的な「うたかたの夢」を享受できた時代は過ぎた。一刻も早く憲法改正を実現し、「専守防衛」なる妄想を撤廃し、敵地攻撃のできる国防軍創設、スケールアップした軍事力増強、武器輸出の全面的解禁、非核三原則撤廃などを実行していかなければならない。もしもそれが実現できなければ、我々日本人の未来には地獄が待ち受ける。
「専守防衛」なるものの実態は、平和主義でも何でもなく、日本全土をかつての沖縄戦のような地上戦に巻き込み、非戦闘員である無辜の国民が多数犠牲になることを意味している。そして軍事力の弱体化は確実に敵対国からの攻撃を誘発する要因となる。妄想平和主義こそが戦争を招くのだ。

現在の日本が置かれたる軍事情勢の現実を知るためにも、ぜひ今回の黒井氏のレポートをご熟読いただきたい。


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『 空軍力の谷間と防衛産業のゆくえ、そして緊迫の朝鮮半島 』
(軍事研究家 / 黒井執斗)

去る2013年3月末の報道において、中国がロシアから少なくとも24機の新鋭戦闘機Su-35(スホーイ35)とラーダ級潜水艦四隻を購入することに合意したと伝えられました。当初はSu-35に関しては僅か四機のみを購入するとしていた中国側ですが、これは明らかにコピーを前提とする行為だとして、ロシア側が反発していたものです。
そして、ラーダ級潜水艦四隻のうち二隻は中国国内で建造されるとのこと。中国としては潜水艦の製造ノウハウを得られることも大きなメリットとなるでしょう。
我々の日常生活の中では掻き消されてしまうであろう報道ですが、これらは中国の著しい空軍力、海軍力の近代化・強化の証であり、我が国の防衛を考える上で実直に危機感を高めるべきです。
今回は歴史的経緯や空海自衛隊の現状を含め、織り交ぜて書いてみたいと思います。

それにしても、まず思うのはロシアはお金に困っているのだなぁ、という事です。自国向けの配備すら、まだ僅か十数機の新鋭機を売るというのですから。そして、中国は海軍力だけではなく空軍力においても、急ピッチで近代化を推し進めていることになります。
世界経済、特にEU経済の低迷によってロシアの外貨獲得手段であるエネルギー資源収入が低迷しています。私が子供の頃に読んだ本には、二十年後にはガソリンが無くなる、と書いてありました。ところが、遙かに時が流れた今、まだガソリン車が普通に走っています。これは原油を採掘する技術の向上により、以前ならば不可能であった深部に埋蔵されている原油が掘り出せるようになった為です。
ロシアの資源開発もそのパターンであり、難易度の高い採掘には余分なコストがかかります。よって、需要と価格が連動して低迷すれば商売にならなくなります。アメリカにおいてシェールオイル・ガスの採掘技術が実用化され、今後はますます苦しくなるのではないでしょうか。

資源がダメとなると、ロシアには売る物は軍事兵器しか無いですから、出し惜しみ無しで売ってくることになります。とは言え、兵器を他国に輸出する際には性能を落としたり機能を削ったりして売るのが常識です。これを「モンキーモデル」と呼びます。
ロシアにとって中国はお得意さんではありますが、好き勝手に分解しては劣化コピーを大量生産し、国産開発だと言い張るたちの悪い客でもあります。これまでにも度々クレームが付いたり、あまりいい関係ではありません。そして何よりも、国境紛争も存在します。にも関わらず新鋭機を二十四機も売るとは、その後のコピーも織り込み済みの価格かも知れません。
そして、ロシアは情け容赦ないまでに立派な武器商人です。中国と敵対関係にあるインドに対しても、同じ兵器を売りつけていたりします。興味深いのは、いずれも輸出用のモンキーモデルでこそあれど、インド向けの方が機能が上であったりする事です。いかに中国が信用されておらず、ロシアの怒りを買っているかを物語っています。

さてここで一旦、航空兵力の重要性を理解する為、時は20世紀半ばへと遡ります。
1941年(昭和16年)12月8日、これはまぎれもなく歴史のページに刻まれた日付です。アメリカに宣戦布告した大日本帝国は東進させた空母六隻よりなる機動部隊から発艦した艦載機によってハワイのオアフ島真珠湾を先制奇襲攻撃し、米戦艦八隻を撃沈・大破させ、地上基地及び湾港施設にも損害を与えました。ある意味大きな賭けではありましたが、この歴史的な作戦はひとまず成功したのです。
当時、世界の海軍の主力は大砲を備え鎧のような分厚い防御装甲をまとった「戦艦」であり、発展途上の航空機戦力をもってそれを撃破することは不可能であるとされていました。しかし、大日本帝国海軍は空母機動部隊から飛び立った戦闘機・攻撃機により「停泊中の戦艦」を沈められる事を実証して見せたのです。
これは世界初と述べられる事も多いのですが、残念ながら史実とは異なります。遡ること約一年、1940年11月のイギリスによるイタリアのタラント軍港空襲において戦艦が撃沈されたことを参考にし、考案・実行された作戦と見るべきでしょう。

そして付け加えるならば、目標であった湾内に米空母が不在であったことは想定外であり、今なお様々な憶測があります。つまり、奇襲攻撃を予め知っていたアメリカ政府が型遅れの艦船のみを残して襲撃させた、というトラップ論です。真珠湾奇襲によって反戦色の濃かった民意が参戦へと傾いたことは事実でしょうが、ここでは本題からそれる為、省略します。
そしてもう一点、もし仮に第三波攻撃を敢行して更に港湾設備や燃料備蓄タンク等を徹底破壊していれば、史実に増して暫しの間は西太平洋におけるアメリカの反攻を阻止できた事でしょう。

時を同じくして東南アジアでは、マレー沖海戦が勃発していました。要塞化されたシンガポールに君臨する大英帝国海軍は、その権力と栄光の象徴である新鋭戦艦プリンス・オブ・ウェールズを筆頭とする東洋艦隊を北上させ、その威信にかけて日本軍を駆逐すべく出撃しました。
しかし、ハワイとは遠く隔てたマレー半島沖においても、大日本帝国海軍の航空戦力は魚雷による雷撃と航空爆弾の投下により敵を打ち破り、大英帝国の戦艦プリンス・オブ・ウェールズ及び巡洋戦艦レパルスを撃沈する大きな戦果を上げました。これは航空戦力が「作戦行動中の戦艦」をも沈められる事を初めて証明した事となります。

大東亜戦争緒戦におけるこれらの戦闘は、二つの意味で非常に大きな出来事でした。
一つは、航空戦力をもって「停泊中の戦艦」及び「作戦行動中の戦艦」をいずれも撃沈することが出来ると実証し、海軍の主力が長年の戦艦を決戦戦力とする大艦巨砲主義から、航空兵力を持った航空母艦(空母)の時代へのバトンタッチを決定付けたこと。
そしてもう一つは長きに渡って欧米列強の植民地として虐げられてきた有色人種が、決して西洋人(白人種)に劣るものでは無いと証明して見せたことです。

これらは大日本帝国陸海軍によって世界に先駆けて実証された事でありますが、それは同時に、自らをも窮地に至らしめる事にもなります。なぜならば、大艦巨砲主義の象徴たる史上最大の戦艦である大和及び武蔵を保有し旗艦とするのが大日本帝国連合艦隊であり、それら最強の不沈艦と謳われた巨大戦艦もまた、後に米軍の航空戦力により没する運命に至るからです。
いずれにせよ、マレー沖海戦に敗れた事に端を発し、マレー半島を破竹の勢いで南下してきた日本軍によってシンガポール要塞は陥落、七つの海を制覇したイギリス植民地主義は衰退し、阿片戦争以来100年にも及ぶ歴史に事実上の幕を下ろすことになります。

さて、大東亜戦争緒戦の破竹の進撃によって大艦巨砲主義たる戦艦が主役の時代は事実上の終わりを告げ、航空戦力主体の航空母艦 (空母)の時代が訪れました。これが意味するのは、自国及び同盟国が制空権(航空優位)を持たない海域において、上空に護衛の航空機を持たない艦隊は安全に作戦行動を行えない、という事です。

そして日本は周囲を海に囲まれた島国です。その国土へ攻め入る為に大量の陸軍兵力を送り込もうとすると大量の輸送艦(揚陸艦)が必要となります。つまり、制海権がなければ陸軍兵力の大量投入は出来ないのです。そして制海権を得ようとするならば、その前にまず制空権(航空優位)を得なければなりません。
これはすなわち、日本は島国であるが故に長大な海岸線を持ち海軍力が重視されますが、制海権確保の前提として、制空権を守る航空機戦力もまた非常に重要であると言うことです。それは現代では、事実上の空軍たる航空自衛隊の役目になりますが、1980年以降の我が国はある意味、大変幸運に恵まれた環境であったと言えます。それはF-15イーグルという類い希なる名機の大量保有です。

飛び抜けた性能を持つ兵器の開発・誕生には、それを必要とする危機感が欠かせない要素となる事が多いのですが、この場合、それはソ連のMiG-25(ミグ25)フォックスバットでした。この機体はマッハ3を超えて飛行する様子がレーダーに捉えられた事もあり、西側陣営からは大いなる脅威だと考えられていました。
航空機に限らず、陸海空合わせて兵器の性能は明確には公開されません。これは手の内をわざわざ敵国に教える必要もなく、発表したとしても、敵国に深読みさせるような控えめな数値を出すことが常です。MiG-25もまた、そんな秘密のベールに包まれた機体でした。そして、それに対抗すべく危機感を持って開発されたのがアメリカのF-15だったのです。

そして東西冷戦さなかの1976年、ベレンコ中尉亡命事件が起こりました。演習中のMiG-25が突如進路を変え、日本の防空識別圏へと侵入したのです。該当機が低空飛行に移ると日本のレーダー網はそれをロストし、スクランブルしたF-4EJ戦闘機も対象機を発見できない中、MiG-25はあろう事か函館空港に強行着陸しました。子供心にも、当時のTVも新聞も、ニュースはもう大騒ぎだった記憶があります。軍事機密の機体を取り戻す為にソ連が攻めてくるとの憶測すらあり、函館空港の周囲を陸自の戦車が取り囲む程の大事件でした。
そして肝を冷やした日本を尻目に米軍が機体を分解調査し、恐れていた程の性能ではないことがわかりました。高速・高機動・長航続距離の優れた攻撃用戦闘機であると想定していたにも関わらず。実際には高々度迎撃用の防空戦闘機だったわけです。幻のMiG-25に対抗すべく開発された結果として、完成したF-15イーグルは飛び抜けて世界最強の機体となりました。

そして、それは同時に同盟国への輸出という点で問題を孕みました。軍事兵器を輸出すれば儲かるのは当然ですが、その開発には膨大な費用がかかる為、数を作れば開発費を頭数で割ることで、自国における調達費も下げることが出来ます。
しかし、チタン合金を多用した機体設計に強力な双発エンジン(ジェットエンジンが二つ)も相まって、信頼に足る同盟国の中で高価な機体を買える国が極めて限定されてしまう事態になったのです。そんな中、日本はF-15Jを総計約200機も購入(ライセンス生産)し、それによって周辺国に対して空軍力での大きなアドバンテージを得ました。アメリカ空軍でさえ廉価機であるF-16と合わせての「Hi-Lo-Mix」運用を甘受せざるを得ない中、日本はF-15のみを主力としたのです。モンキーモデルとはいえ、足りない機能は自国の機器で補いますから、そんな強力な制空戦闘機を大量保有する国に喧嘩を売ろうなどと誰が思うでしょうか。
その事実は強力な抑止力となりました。ちなみに、今現在までにおいて戦闘で撃墜されたF-15は、世界で一機も存在しません。

しかし、かつての零戦がそうであったように、時が流れればいかに飛び抜けた傑作機とて旧態化していきます。ですが、それでもF-15はなお名機でした。なぜならば、基本性能が優れていた上に、大柄な機体によって新しい電子機器を搭載するスペースが存在したからです。レーダーや電子装備、つまりアビオニクスを更新する改造を施すことにより、まだまだ現役の第一線で戦える機体に改造することが出来たのです。

時は流れて21世紀となり、F-15Jはともかくとして、その一世代前の戦闘機であるF-4EJ改は「ファントム爺さん」などと呼ばれ、機体疲労寿命を迎えつつありました。その後の次期F-Xとして空自が強く望んだのは、最強のステルス戦闘機たるF-22ラプターでした。徹底的にステルス性を追求したこの機体は、レーダーに捉えられても鳥程度にしか映らないとされています。
かつての大東亜戦争での空戦といえば、有視界の短距離で急旋回を繰り返して敵機を機銃で撃ち落とす、いわゆるドッグファイトでした。そして現代はミサイルの時代であり、ステルス性に優れたF-22は敵のレーダーに捕捉される前に敵機をレーダーで捉え、先行してミサイルを発射して撃ち落としてしまう、という一方的な戦闘を行うことが可能です。

1980年当時最強のF-15戦闘機によって周辺国へのアドバンテージを得ていた航空自衛隊が、その次の世代として最強のステルス戦闘機たるF-22を望む。それはごく自然な成り行きであり、国防上大きな意味のある事でした。
しかし、その取得には大きな壁が立ちはだかります。それは先端軍事機密を守る為のスパイ防止法が日本に無い事です。そればかりか、イージス艦の機密情報がコピーされて外部へ持ち出され、中国籍の妻を持つ自衛官の自宅に持ち帰られていた事案が発覚します。日本はアメリカの信頼を完全に失いました。
さらにはファイル共有ソフトの使用による暴露ウィルス感染により、海自の使用している海底地形マップデーターと表示閲覧用のソフトが一式で流出し、インターネットを通じて世界中にぶちまけられて拡散しました。私はそのあまりの詳細さに、思わず背筋が凍る思いがしました。これは潜水艦を運用するには必須のデーターであり、日本近海へ進出する中国への大きなプレゼントになった事でしょう。

これらのあり得ない程の失態も重なり、最強のステルス戦闘機の軍事機密を守る為、アメリカ議会は同盟国に対する禁輸を決定し、交渉は頓挫してしまいます。
その後も何度か希望の光は見えたり消えたりし、空自は頑なにF-22を熱望したのですが、遂に米民主党オバマ政権の軍事費削減政策によって米軍の調達すら大きく減らされ、その生産ラインは閉じてしまったのです。これはすなわち、F-22の取得が永遠に不可能になった事を意味します。

その後の次期F-Xとしては欧州機も候補に挙がっていましたが、それは元より本命とはなり得ませんでした。そこに至る理由の一つが、大東亜戦争緒戦から中程までにおいて無敵の戦闘能力を誇った零戦を「劣等民族のイエローモンキー」と馬鹿にしていた日本人が開発したことです。再び同様のことが起こるのを恐れた米国は、GHQ占領下の戦後日本に航空機開発を許しませんでした。何しろ、大東亜戦争緒戦当時の米軍において「ゼロファイターに遭遇した際、同数なら戦闘を避けて帰投せよ」との命令が出ていた程です。そんな日本人に戦闘機の開発を許せば、またいつの日かとんでもないものを作り出すに違いない。痛い目に遭ったアメリカがそう考えるのも至極当然のことかも知れません。
時代は一気にプロペラ機からジェット機へと移りゆく中、約七年間の禁止期間とはいえ日本の航空産業はノウハウを得る機会を失い、衰退しました。技術というものは継続するからこそ発展するのであり、一旦途切れてしまえば失われてしまうのです。そして機体整備の統一性や米軍との連携から考えても、現状はアメリカ機を買うしか選択肢が無いのが実情だと言えます。

さて、そうなるとF-22との「Hi-Lo-Mix」を構成する予定のF-35ライトニング2しか選択肢が無いのは元より明らかでしたが、これは本来ならばそう悪くない買い物になるはずでした。なぜならば、F-22には及ばないもののそれなりのステルス性能を持ち、かつレーダーや電子装備、すなわちアビオニクスと呼ばれる半導体絡みの機器は日進月歩であり、10年も経つと大きく進歩します。その部分ではF-22をも上回る性能があるからです。

ですがF-35には大きな懸念がありました。それは、標準機、垂直離着陸機、空母艦載機、というABC三つのタイプを網羅すべく開発が進められた事です。この陸海空軍の要望を全て満足する機体がすんなり開発できれば万々歳なのですが、戦闘機に限らず「設計」の一般論として、欲張った複数の要求を満たそうとすると往々にして問題が発生して行き詰まり、難産となるのです。これは分野こそ違えども設計エンジニアの私からすれば常識中の常識であります。
案の定、F-35の開発は遅延に次ぐ遅延が続き、自ずと開発費用はかさみ、廉価機であるはずが随分と高いものになってしまいました。価格的なメリットは確実に失われるでしょう。そして先の報道によれば、2017年に日本に引き渡し予定の最初の4機のF-35Aが日本の要求仕様を満たせない事が明らかになりました。具体的には、機動性能の低下と短距離対空ミサイルが搭載不可であることです。今時、対空ミサイルを積めない戦闘機など使い物になりませんから、これは即ち、実戦配備は不可能であり、使い物にならない…との報道も見受けられます。特に産経は以前からF-35を目の敵にしており、論調も強いものです。

しかし、いずれにしてもまずアメリカでの訓練飛行があり、飛行小隊を組める数が揃って実戦配備に就くまでには、最初の引き渡しから更に数年がかかるでしょう。その間に完成型へと開発が進み、全てソフトウェアのアップデートで無事解決する事を祈るのみです。
F-4EJファントムは退役寸前、F-15Jは防衛予算削減で近代化改修は毎年数機しか行えず、改修済みの機体は五十機程度と、第一線を張れるのは総計約二百機の1/4程度しかありません。そして、次世代ステルス機のF-35Aは計画遅延の連続。日本の空を守る航空自衛隊にとって、ここ数十年の間かつて無かった戦力の谷間の状況になりつつあります。少なくとも、F-15Jの圧倒的性能で守られていた日本の空は、そのアドバンテージを失いつつあるのです。この事は、是非危機意識を持って頂ければと思います。

そんな中、中国はロシア機とアメリカ機のコピーであるJ-11及びJ-10を計三百機あまり保有するばかりか、ロシアの新鋭機Su-35を二十四機も購入するというのです。前述のように軍事兵器の売却には本来の性能を落とした、いわゆるモンキーモデルを輸出するのが当たり前です。ですが、Su-35はエンジンに推力偏向ノズルを搭載した高機動モデルです。更にはアフターバーナーを使用せずに超音速飛行の出来るスーパークルーズも可能です。中国は勿論、近い将来には劣化コピーした機体を開発して大量配備するつもりなのも間違いないでしょう。
そして非常に高いとされる機動性能を裏付けるかのように、近年のロシア製戦闘機は極めて美しく躍動的なデザインとなっています。私見としては、これは設計性能が優れている事の証左であろうと思います。

それに対し、航空自衛隊は改修した従来型機を使って対応せざるを得ませんし、待ちわびる新鋭機のF-35が本当に予定の性能を満足するのか、そしていつ完成するのか怪しい状況です。勿論、現代の空の戦いは戦闘機の性能だけで決まるものではありません。搭載ミサイルの性能や、空の司令塔たる早期警戒管制機(AWACS)の能力に依存する部分も大きいです。しかしながら、F-22ラプターの取得に失敗したのは本当に痛いことです。
このような事が戦闘機の代替わりの度に発生しては、とてもたまったものではありません。スパイ防止法を整備する事も急務ですが、航空兵器をアメリカに頼り切っているからこそ、このような事が起こるのです。では、それを解消する為の国産化はどうなっているのでしょうか。

空自はF-2戦闘攻撃機を約90機保有、運用しています。これは事実上、海に囲まれた島国日本ならではの、対艦攻撃に特化した機体です。2000年に運用が開始された比較的新しい4.5世代機のこの機種は当初、エンジン以外の全てを国産開発する計画でした。何故エンジンを除くのかというと、これはジェットエンジン(ターボファンエンジン)は独自のノウハウに頼る部分が多く、高出力のものを国産で自力開発するのが難しいからです。これは、プロペラ機からの切り替わり時期に航空機開発を禁じられていたことが未だに影響しています。
ところが、機体の独自開発においてもアメリカからの圧力がかかり、既存のF-16戦闘機をベースにしての日米共同開発、共同製造とする事となりました。しかも、日本側が新たに開発した新技術は全てアメリカに譲渡するという不平等な取り決めでした。日本側の開発を請け負った三菱重工業はF-16の垂直尾翼以外は全て設計し直すという徹底ぶりであり、その目標性能の高さと相まって、アメリカ側からは「ニューゼロファイター」とも呼ばれました。
そして完成を見たF-2はF-16ベースの小型の機体ながら、大きな対艦ミサイル4発を装備できる世界最強とも言える対艦攻撃機となりました。この「攻撃」という表記については、例によって「周辺国への配慮」というものが必要とされ、当初は「支援戦闘機」と呼ばれていました。何だか本当に意味不明な分類ですが、F-2が対空戦闘も可能な対艦攻撃機であることは間違いありません。また、この機の塗装色である洋上迷彩は非常に美しいのでファンも多いのです。

そして、買う事の出来なかったF-22ステルス戦闘機の代わりとしては、日本は独自に「心神」という実証機を開発中です。これはレーダーに映りにくいステルス性を重視した第5世代の制空戦闘機を目指したものです。研究段階の実証機ですから、まだまだ道のりは長いですが、大いに期待せざるを得ません。
そして、純国産機開発において最もネックとなる高出力のエンジンですが、これまでに欧米からのライセンス生産で技術を蓄積してきたであろうIHIは、予算さえ付けてくれれば独自開発可能であると言っています。近い将来、日本の空を国産開発のステルス制空戦闘機が守る日が来るかも知れません。それを信じ、何とかこの目で見届けたいものです。

さて、近未来の話はここまでとして、現状がどうなのかを考えてみましょう。
スホーイはロシアの広い国土をカバーする為、長大な飛行距離を持っています。作戦行動半径は約1500km、そして中国全土の基地に配備されたスホーイ及びそのコピーの数は約300機。全13ヶ所の基地のうち対日行動半径内にあるのは6ヶ所となります。そして中国空軍機の稼働率は決して高くありませんから、それを60%とすれば対日戦に割けるのは精々70~80機前後と考えられます。
それに対し、空自の主力たる近代化改修済みF-15Jは約50機前後、稼働率を80%として総勢40機。数の上では不利となります。そしてレーダーの最大探知距離はほぼ同じ300km程度ながら、F-15Jは最大24目標を探知・同時追尾して最大8目標を同時攻撃可能ですが、対するスホーイは最大10目標探知の2目標同時攻撃。
火器管制システムの差、そして800km先を見渡せる空の司令塔AWACSの有無により、空自のF-15Jが勝利を収めるシナリオが見えてきます。しかし、中国はモンキーモデルとは言え、限りなく第5世代機に近い新鋭のSu-35を購入するわけですし、レーダーを含むアビオニクスの更新も行われており、同時攻撃目標数を6とする改修が進められているとの情報もあります。
ミサイルにおいては、空自のAAM-4(99式空対空誘導弾)は撃ち放し能力を持つ上に約100kmの射程があり、現状では支配的でしょう。しかしながら、もはや空自にはかつての新鋭最強戦闘機F-15に支えられた圧倒的アドバンテージはありません。一旦接近戦となれば、ドッグファイトにおいては明らかにスホーイ優位と考えるべきでしょう。第5世代戦闘機のF-35が使い物になるまでの間、そしてその後も国防を担う大きな柱として、歩みの鈍いF-15Jの近代化改修を急がねばならないのは勿論のことです。

先述の通り、戦闘機に関してはエンジンの問題で日本独自での開発は厳しいのが現状です。ですが、その他兵器に関しては独自の新鋭型を次々と生み出しています。
10式戦車、そうりゅう型潜水艦、ひゅうが型ヘリ空母、あきづき型日本版イージス艦、そしてP-1哨戒機。こんな国力と技術力を持った国は滅多となく、世界でも数える程でしょう。元より独自ミサイル開発では飛び抜けたものがありましたが、次々と完成していく新型兵器は頼もしい限りです。

そして、武器輸出三原則の見直しにより、早速オーストラリアがそうりゅう型潜水艦に食指を動かしています。これはディーゼル・エレクトリック艦にAIP(非大気依存推進)を組み合わせた通常動力艦で、以前は数日間が最高であった水中持続時間を2週間以上に延長したものです。また、スウェーデンやドイツのAIP搭載潜水艦の水中排水量が2000t前後の中、そうりゅう型の4200tの水中排水量は通常動力潜水艦としては飛び抜けて最大のものです。勿論、原子力潜水艦とは違って原子炉冷却ポンプを動かし続ける必要もない為、高い静粛性を誇ります。
1980年代まではスクリューのキャビテーションノイズが大きく問題視されていた日本の潜水艦ですが、100年にも及ぶ技術と努力の蓄積で世界トップレベルまで到達しました。

中国がロシアから購入を決めたラーダ型もオプションでAIP機関が搭載できますが、銅鑼を鳴らして航行しているようだと形容される中国の原子力潜水艦の欠点を補完する為、恐らくAIP機関搭載型で間違いないと考えるべきでしょう。
また、ロシアがあてにしていたインドがフランスからスコルペヌ級潜水艦の購入を決めてしまいましたから、ロシアとしては何が何でも中国に売りたかったのかも知れません。この中国の潜水艦増強、日本は慎重に警戒する必要があります。元より中国は約60隻の潜水艦を保有しており、その数の力に静粛性に優れたラーダ型が加わることになります。

それに対し、日本は長年に渡り潜水艦の保有数を16隻に制限してきました。これは例によって「周辺国への配慮」という事と、東西冷戦時代に旧ソ連の潜水艦を太平洋へ進出させない為の必要最低数として設定されていたものです。
ところがこの制限があるにも関わらず、潜水艦製造技術を保持する為に、毎年一隻の潜水艦を建造し続けていました。つまり、通常ならば30年は使える潜水艦を16年でスクラップにし続けていたわけです。
ようやくそれが見直され、22隻+2隻(訓練用)へと改められる事になっています。ただし、艦はスクラップにしなければ確保出来ますが、乗員がいません。海自は護衛艦でも定員割れで運用せざるを得ない程に人手不足が深刻であり、早急な乗員確保が課題となっています。

オーストラリアは米国の同盟国としては仲間でありますが、実際はあからさまな人種差別のある国であり、個人的にはあまり好きません。それに加え、売り渡した軍事機密が中国側へと流れる可能性も否定しきれず、あくまで一世代前の技術を移管する程度に留めておいた方がいいかとは思います。

陸自の最新戦車となる10式ですが、これは他国の同等性能の戦車より3割近く小さく軽量なボディを実現しています。前モデルの90式に関しても台湾が強い興味を示して売って欲しいと打診していました。その後継の10式はインド、台湾から打診があり、潜水艦に至っては退役艦でもいいからと打診が複数ありとのこと。
日本製兵器が対中国用の装備として環太平洋諸国の注目を集めているのです。

そして輸出手続きが始まったものに水陸両用の飛行艇US-2があります。これは救命・海賊対策を目的(名目)としてインドに輸出されるのですが、波高3mでも離着陸可能な水艇です。波高3mと言えばかなりの荒波であり、欲張った武装をてんこ盛りにした挙げ句、重心が高くなってしまった韓国のイージス艦が直進できず蛇行する程の荒れ具合です。US-2飛行艇が飛び抜けて優秀なのか、それとも韓国イージスの出来が悪いのか。その判断は読者の皆様にお任せすることにいたしましょう。

そしてP-1哨戒機に関しては、老朽化が進むP-3C哨戒機の後継として独自開発が進められていました。川崎重工の設計製造です。多少のトラブルがあり約1年の遅れが出ましたが、量産型1号機、2号機が海上自衛隊の厚木基地に納入されました。
4発ジェットエンジン搭載の機体で、レーダー走査にモーターを使わないフェイズドアレイレーダーを搭載し、操縦系統に光ファイバーを用いたフライ・バイ・ライト方式を採用しています。水中の潜水艦を発見するには磁界の変化を用いますが、機内配線の電気信号による磁界発生を抑えられますから、より深い海中の潜水艦探知が期待できます。
また、アメリカもP-3C後継の新型哨戒機P-8を開発中ですが、これはB737旅客機をベースとした為、長時間低速飛行に無理が出て開発が難航しています。結果として、機体ごと新規開発した日本のP-1が先に完成しました。

更にはP-1は非常に静かな航空機で、プロペラ前任機のP-3Cよりも静粛性が高い程ですが、例によって自称市民団体が早速クレームを付けています。「騒音源が存在する限り、私たちは受け入れられない。性能を向上させた機種導入は周辺国をいたずらに刺激し緊張を高めるだけ」との主張です。
騒音問題を訴えるはずの市民団体が「性能を向上させた機種導入は周辺国をいたずらに刺激し緊張を高めるだけ」とはこれいかに。背後関係が見え隠れするのは当然ですね。日本の対潜哨戒能力が高まると、余程都合の悪い人達がいるのでしょう。

これらの同盟国に注目される兵器ですが、どの国に売るか、どれほどダウングレードして売るか、十分に見極めねばなりませんが、国産兵器の輸出は同盟国の為でもあり、自国の為でもあります。
兵器開発には莫大な資金が必要であり、モンキーモデルを同盟国に輸出できれば開発費を頭数で割ることが出来、自国調達価格を下げることも出来ます。そうして資金を回収しつつ、また次なる新型兵器を開発する予算へと回す。これを上手く実現できれば日本の防衛産業は発展し、規模を大きくしていくことが出来ます。そしてそれが、自国開発した独自兵器での自国防衛をなす道へと繋がります。アメリカ、ロシア、フランス、ドイツ、これらの国では当たり前に行われていることです。

さて去る三月、南シナ海の西沙諸島周辺海域において、ベトナム船籍の漁船が中国海軍の艦船から警告も無しに発砲を受けて炎上しました。中国が領有権を主張して掠め取ろうと狙っている海域ですが、ベトナム政府の抗議に対し、中国は「でっち上げだ」と回答する始末。
はたして、ベトナムが強い軍隊を持っていても同じ事が起こったでしょうか?決して起こらなかった事案だと思います。完全に舐められているからこのような事が起こるのです。そしてこれは、急ピッチで軍拡を続ける中国に対応しきれなくなった場合の近未来の尖閣や沖縄の、そして日本の姿でもあります。
国民の生命・財産を守り、国体を維持する為に軍事力は必要です。強い軍隊を持っていれば、滅多なことがない限りは侵略の意図を挫く事が出来ます。また、万一火の粉が降りかかっても、それを払いのける事が出来ます。

同じく中国と領有権係争のあるフィリピンですが、世界一弱い軍隊と呼ばれるに相応しく、陸軍は40年落ちの軽戦車が約40両、海軍は45年落ちの中古カッター(小型巡視船)が2隻、空軍に至っては8年前より戦闘機が無い状況です。
そんなフィリピンが軽戦闘機(練習機)を12機、韓国から購入する事になりました。このT/A-50を韓国は「国産機」と称していますが、設計はロッキード・マーチン、製造も5割以上をロッキード・マーチンが担当する機体です。要するに決して安かろう悪かろうの韓国製ではなく、小型ながらミサイルも装備できる、素性は悪くない機体だと言えます。
アメリカに頼んで退役・保管されている中古のF-16辺りを供与してもらうのも手だと思いますが、ろくに整備も出来ずに稼働率が落ちることを思えば、T/A-50の方が賢い選択かも知れません。
一機約35億円の軽戦闘機が12機ですからたかだか知れた戦力ではありますが、あると無いとでは大違いです。中国による侵略を阻むべく、フィリピンは舵を切ったと言えます。勿論この決断は正しく、我々もその意気込みを大いに見習うべきでしょう。

そして、フィリピンから日本には巡視船を供与して欲しいとの打診があり、2013年度のODA円借款を利用して10~12隻の新造船が供与されると決まっています。日本の造船産業にとってもいい話であり、中国の覇権主義に対抗する包囲網整備の一手にもなり、一石二鳥とはこの事です。
この巡視船供与の話はフィリピン人の間ではかなり広まっており、ネット上の自衛隊関連動画に付けられたコメント欄には「Thank you Japan !」の文字が踊り、フィリピンバーへ行けばお姉さんにまで礼を言われてしまいます。一石三鳥ですね(笑)。

さて最後に、この原稿を書いている今現在(4/11)はまだ発射の一報はありませんが、北朝鮮絡みについて少し。
約二ヶ月に及ぶ米韓軍事演習が始まった辺りから強行姿勢を見せ始めてエスカレートさせてきた北朝鮮ですが、アメリカは一歩も引かない姿勢を保ってきました。
古い機体とはいえ核兵器を搭載できる現役戦力であるB-52戦略爆撃機を演習に派遣し、それに反発する北朝鮮に対し、更に驚いた事にB-2ステルス戦略爆撃機を二機派遣、韓国の演習場に模擬弾を投下して帰還しました。
B-2スピリットといえば、我々と同じ人間が設計したとはとても思えない、尾翼のない全翼機です。空力的に考えればまともに飛ぶのが不思議ですらありますが、コンピューターの制御によって見事に飛行します。
一機約2000億円ですから、約1500億円の海自イージス艦よりも高価な事になります。ステルス性を生かして敵地深くまで潜入し、最大16発の核爆弾を投下します。こんな機体を二機も送られて攻撃されれば、小国ならば消滅してしまうでしょう。
ちなみに、この二機の派遣に要した費用は約2億円。護衛の戦闘機も当然付いていたでしょうが、凄まじいランニングコストです。

上記の事だけでも凄い話ですが、更に沖縄に暫定配備しているF-22ステルス戦闘機を韓国に送り込み、更に極め付けとして、中東に展開していた原子力空母ジョン・C・ステニスを西太平洋に移動させました。当然ながら横須賀の米軍基地は第七艦隊の空母ジョージ・ワシントンの母港ですから、同じ海域に二隻の空母が存在することになります。
アメリカが同一海域に空母を三隻集めたとき、それは開戦の準備が整った事を意味します。二隻の場合、それは強い警告を意味します。1996年に勃発した台湾海峡ミサイル危機では、ミサイルを海中に打ち込んで威嚇する中国に対し、アメリカは二隻の空母を派遣しました。その結果、恐れをなした中国は引かざるを得なくなりました。
ですが、今回の北朝鮮は引きません。引かないばかりか攻撃対象として在日米軍基地を名指ししたり、核でアメリカ本土を攻撃するとまで言ってしまっています。イラクのフセインですら、そんな直接的な挑発はしませんでした。異常と言うか、正常な判断力を失っているのではとさえ思えます。

そして空母は決して単独で移動することはなく、「空母打撃群」と呼ばれる艦隊を引き連れて行動します。イージス艦の護衛を複数引き連れ、海中には原子力潜水艦を伴い、更には補給艦も同行します。そして監視衛星すら移動させることもあり、空母を動かすだけでも要する費用は莫大な金額となります。
更に米軍はミサイル原子力潜水艦シャイアンを送り込み、イージス艦フィッツジェラルドを送り込み、あろう事か移動式の巨大な洋上Xバンドレーダーまで投入しています。
同盟国である韓国・日本を守る意思表示なのでしょうが、恐らくそれだけでは無いでしょう。それは中国に対する警告です。アメリカを怒らせればこうなるのだと、軍拡に勤しむ中国共産党へのメッセージも込められているのでしょう。

韓国発表の情報、すなわちアメリカの軍事偵察衛星からの情報によれば、ムスダン、ノドン、スカッド、の三種類の弾道ミサイルが発射準備を整えていると伝えられています。射程距離から言えば、ムスダンはグアム、ノドンは日本、スカッドは韓国が仮想目標となるでしょう。
前回の12月の自称衛星打ち上げロケットは、スカッド→ノドン→テポドン→テポドン2、と射程距離を伸ばしてきた同一系統の発展型と想定されるものでしたが、今回の中距離弾道ミサイルムスダンは全く別系等であり、旧ソ連の潜水艦発射弾道ミサイルをベースとしたものです。既にイランに輸出されて発射実験済みとの情報もありますが、確証はありません。
発射された各種ミサイルがグアムへ向かえば展開中の米イージス艦が迎撃するでしょうし、日本へ向かえば海自のイージス艦が迎撃するでしょう。例によって日本は海上配備型のSM-3ミサイルで狙い、撃ち漏らしを地上からのパトリオットPAC-3が受け持つ事になります。また、在日米軍基地も約400発のPAC-3配備を完了しているはずです。
ただし、PAC-3の射程は約20km程度ですから、ピンポイントでの防御、すなわち首都圏や軍事基地等に限られます。それ以外の大多数の日本人を守るのは、二隻でほぼ全土をカバーするイージス艦のSM-3迎撃ミサイルとなります。

本来、高性能な対空レーダーを備えたイージス艦はミサイル飽和攻撃から虎の子の空母を守る為に開発されました。つまり、日本は守るべき空母も無いのに高価なイージス艦を六隻も保有したわけで、自分自身を守る事も出来る護衛艦隊には贅沢すぎる装備だとも言われていました。
ところが今やMD(ミサイル防衛)の要として、日本列島という巨大な空母を守る任務に就いています。大化けしたというか、決して無駄にはならなかった好例と言えます。

自衛隊と米軍はそれぞれ自力で弾道ミサイルを迎撃できますが、苦しいのは韓国です。彼らは高価なイージス艦を三隻も保有していますが、SM-3迎撃ミサイルを装備する予算が取れません。ミサイルが上がっても、ただレーダーに映るのを見ているだけです。
また、差し当たり対北朝鮮に必要とも思えないF-15k戦闘機、一機当たり125億円を40機も保有していますが、地上発射型のパトリオットPAC-3が高額すぎて導入を断念し、ドイツから中古のPAC-2を購入しているのみです。日本が保有しているからと高額な正面装備に手を出し、肝心のものが買えないのです。
そして中古のPAC-2は近接信管によってターゲット近傍で爆発し、飛散する破片によって目標を破壊するシステムの為、弾頭を破壊できる確率が低くなります。湾岸戦争時の実績迎撃率では40%以下であったとも、10%を切っていたともされています。韓国国民がどこまで情報を得ているかはわかりませんが、もし事実を知っていればさぞ心細いことでしょう。

金正恩体制になってたったの一年、朝鮮半島情勢は緊迫の度合いを一気に増しています。中国共産党がまともに思える程、北朝鮮は狂った行動を続けています。
アメリカも引きませんし、北朝鮮の振り上げた拳の降ろしどころは一つしかないでしょう。複数ミサイルを発射するも全て海へと落ちるコース設定とし、日米いずれも迎撃を見送るケースです。
この文章を皆様が読まれる頃には、そうなって事態が沈静化している事を願います。
(2013年4月11日記)

*******************************************************

いま目の前に迫っている日本の現実を認識した上で、我々国民ひとりひとりに一体何が出来るのかを共に考えてまいりましょう。


黒井執斗様、深田 匠先生、お忙しい中いつも御執筆いただき心から感謝申し上げます。


最後までご覧下さり、誠にありがとうございました。





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● COMMENT ●

こんにちは

軍事レポート、大変勉強になります。

ありがとうございました。

またお願いします。

超大作ですね。
すぐには読めそうにないのでぼちぼち読ませて頂きます。
いつも大変勉強になるので助かります。

やっと読みました!

純国産戦闘機…いつか必ず作ってほしいです。
やはり最終的には自国を守るのに他国を頼るのはおかしいですよね。
たとえそれがどんなに友好な関係の国であろうとも。
自分の身は自分で守るは基本ですね。
今回も大変勉強になりました。
ありがとうございました。

Re: こんにちは

>硫黄島 様
コメント有難うございます。
返信が遅くなり、申し訳ありません。

今後とも宜しくお願い申し上げます。

Re: やっと読みました!

>後で読みます 様
コメント有難うございます。

仰るとおりだと思います。
その基本的な力すら備えていない現状がいかに恐ろしい事なのか…。
一刻も早く、一人でも多くの国民が気付かなければなりません。


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